循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)
【ダイジェスト版】
序文
近年,睡眠呼吸障害が安全管理の面から社会的に関心をもたれるようになった.一方,様々な心血管疾患に睡眠呼吸障害を高率に合併することが明らかとなった.さらに睡眠呼吸障害は偶然に合併するわけではなく,心血管疾患の発症・進展において重要な役割を果たしていると考えられるようになった.例えば心不全に睡眠呼吸障害を合併すると予後は悪化する.また,重症閉塞性無呼吸患者の心血管事故や心血管死亡率は対照群の数倍高いが,前向き観察研究では重症の閉塞性無呼吸を治療すると将来の心血管死亡や心血管イベントを予防できる.したがって,循環器診療を担当する医師は睡眠呼吸障害のマネージメントに関与する必要がある.しかしながら,循環器領域の診療を担当する多くの医師にとって睡眠呼吸障害は馴染みの薄い領域であり,その重要性が理解できたとしても,どのような方法で評価し,どのような治療を行うべきかという段階になると行き詰まる場合が多い.本ガイドラインは循環器診療に携わる医師を対象とし,これらの医師が睡眠呼吸障害の重要性を認識し,日常診療においてそのスクリーニングを行い,さらに治療へと進むための指針を与えるものである.したがって,その内容は可能な限りプラクティカルにすることを心掛けた.また,用語の統一を図り,様々な専門的用語の解説も追加した.
本ガイドラインにおける最近の医学的根拠に基づいた診療指針と現行の保険診療の基準とが必ずしも一致していない場合もあり(例えば持続気道陽圧療法など),両者を区別して記載した.