循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)
【ダイジェスト版】
5 炎症,酸化ストレス,血管内皮,動脈硬化への影響
 動脈硬化の発症と進展には炎症が重要な役割を果たしており,多くの免疫細胞やサイトカインが関与する.なかでも高感度C-reactive protein(CRP)やinterleukin(IL)-6 は,優れた心血管イベントの発症予知因子である.実際,OSA患者から血清中のCRP値とIL-6値を測定すると,OSAが重症なほど血清中のCRP値とIL-6値は増加していた.また,炎症マーカーの1つであるserum amyloidAもOSA患者では増加している.

 また無呼吸や低呼吸後の再呼吸による急激な酸素濃度の上昇は,酸化ストレをもたらす.さらにOSA患者ではエンドセリンやアンジオテンシンの値が上昇することで,持続した血管収縮が誘導され血管内皮障害が誘導される.このようにOSAでは夜間の間欠的低酸素が酸化ストレスを増加させ,種々の分子を介して炎症反応を増強し,血管内皮細胞機能障害を引き起こすことで動脈硬化が加速し,心血管イベントの増加につながると考えられている.
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