循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)
【ダイジェスト版】
7 血栓,血小板活性との関連
 心筋梗塞や脳梗塞の発症には,プラークの一部が傷害され,その部位に血小板が凝集して血栓を形成することで血管が完全閉塞し発症する.このプラークを脆弱化させる分子であるmatrix metalloproteinase(MMP)-9がOSA患者では上昇している.一方,MMP-9 を阻害する分子であるtissue inhibitor of metalloproteinase(TIMP)-1 は,コントロールとOSA患者では有意差が認められない.さらに,OSAでは血液凝固異常により過凝固の状態になっていることが指摘されている.OSA患者で認められる血中Fibrinogenや粘性度(ヘマトクリット),tumor necrosis factor(TNF)- αの上昇は,血栓形成を促進させると考えられている.OSAではplasminogen-activator inhibitor type 1(PAI-1)が増加しており,線溶活性を阻害して血栓の促進傾向に関与している可能性も指摘されている.また,間欠的低酸素による酸化ストレスが直接的または間接的に血小板の活性化や凝固能の亢進に関与していることも示唆されている.
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