循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)
【ダイジェスト版】
1 機序
 睡眠時無呼吸の発生は呼吸調節機序から説明できる.覚醒時の呼吸は動脈血中の二酸化炭素(CO2)および酸素(O2)と高位中枢により調節されているが,睡眠中はもっぱらCO2化学反射を介する負帰還システムにより換気が制御される.動脈血中に増加した動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)は血液脳関門を通過し,H+イオンを遊離することにより化学受容器を刺激する.したがって,血中のPaCO2の変化が脳脊髄液のpHを変化させるためには一定の時間を要する.一般に負帰還システムは,センサーの感度が高すぎる信号の伝達に時間がかかるとき不安定になる.心不全患者では低酸素血症,交感神経緊張など種々の要因により呼吸中枢のCO2感受性が亢進しているだけでなく(高いセンサーの感度),循環時間の延長によりPaCO2の呼吸中枢への伝達が遅れている(情報伝達の遅延).これらが呼吸調節システムを不安定化し,周期性呼吸を誘発しやすい条件を形成している.
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