循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)
【ダイジェスト版】
2 臨床症状
CSA患者に特徴的な自覚症状はなく,基本的にはOSA患者のそれと共通する.不眠,日中の眠気,全身倦怠感などがそれである.また,CSA患者においては,CSAを有さない心不全患者よりも深睡眠が減少し,REM睡眠の割合が低下し,覚醒反応が増加している.このようにCSA患者の睡眠構築は障害されているにもかかわらず,CSA患者において日中の眠気の指標であるEpworth Sleepiness Scale(ESS)は変化せず,AHI とも相関しない.また,心不全に由来する息切れや全身倦怠感と,CSAに由来する症状とを区別することは難しい.純粋なCSA患者であればOSA患者のようないびきを生ずることもない.このような理由から,CSAの存在を自覚症状から予測することは難しい.
CSA患者の中には,チェーン・ストークス呼吸(CSR)を覚醒時にも示す症例がある.また,覚醒時のCSRが安静時には明らかではなくとも,心肺運動負荷試験によって明確になる場合も少なくない(いわゆる換気のoscillation).
CSAを伴う心不全患者は,睡眠中の血中と尿中のノルエピネフリン濃度が高く,CSAが睡眠中の交感神経活性を亢進させると考えられる.OSA患者にみられる交感神経活性亢進の昼間への「持ち越し効果」がCSA患者においても認められるか否かは,いまだ不明である.