循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)
【ダイジェスト版】
3 OSA との違い
(表6)
CSAを伴う心不全例はOSAを伴う心不全症例と比較して,男性に多く,高齢で,BMI が低く,心房細動の頻度が高く,PaCO2が低く,肺動脈楔入圧が高い.また,心不全治療により肺動脈楔入が低下するとCSAも改善する.
無呼吸が血行動態に与える影響もOSAとCSAでは異なる.OSA患者の無呼吸中の胸腔内圧が陰圧となる結果,静脈還流が著明に増加し,前負荷が増大する.拡大した右心室は心室中隔を圧排し,左室容積を減少させることもある.また,心室内外の圧較差が増大し,後負荷も増大する.このような血行動態上の変化が心筋ポンプ機能を直接低下させる.したがって,このような因子が心不全増悪に強く関連している症例(肥満肺胞低換気症候群など)においては,心不全の急性期治療として持続陽圧呼吸療法は有効である.
一方,CSAによる無呼吸中には胸腔内圧低下が生じないため,前負荷や後負荷の増大を介した心筋ポンプ機能の悪化は生じない.しかしながら,CSA患者においては,無呼吸中にその周期に一致した筋交感神経活性,心拍変動,体血圧,心拍数,脳血流の周期的変動が観察される.
表6 OSAとCSAの違い
日中の眠気 睡眠中の交感神経活性 交感神経活性亢進の日中への持ち越し効果
無呼吸中の血行動態 胸腔内圧 前負荷 後負荷
OSA 強い亢進あり−50~−80 mmHg 上昇上昇
CSA 不明瞭亢進不明−5~−10 mmHg 不変不変