循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)
【ダイジェスト版】
1 高血圧リスクとOSA
 OSAと高血圧は互いに合併率が高い.重要な点は,OSAと高血圧は単なる合併ではなく,OSA自体が高血圧の原因となる二次性高血圧の原因疾患の1 つであることである.これまでに,地域住民を対象とした前向き研究であるWisconsin Sleep Cohort Studyにおいて,年齢やBMI と独立してAHI の増加が将来の高血圧の発症リスクになることが示されている.さらに,AHI と24時間血圧レベルには,BMI やその他の要因とは独立した閾値のない直線相関関係がみられる.

 OSAの高血圧リスクとしてのインパクトは若年でより大きく,高齢者ではその影響は減少する.高齢者の収縮期高血圧に対する影響は少ない.青年期若年者を対象にアクチグラフィーを用いた研究では,睡眠時間の短縮(6.5時間未満)が2.5倍,睡眠効率の低下(85%未満)が3.5倍,他の因子とは独立したプレハイパーテンショ
ン(年齢,性別,身長の90パーセンタイル以上の血圧と定義)のリスクとなっていたことから,高血圧の発症リスクとして睡眠の量と質が重要であることがうかがえる.

 我が国においても,高血圧のみならずプレハイパーテンション(正常高値血圧130~ 139/85~ 89 mmHg)は将来の心血管疾患,特に脳卒中のリスクになっているが,その規定因子として肥満がある.高血圧ならびにプレハイパーテンションの規定因子として,肥満の影響はより若年で大きい.45歳の住民を対象として4 年間の体重の増減とOSAの発症を検討した検討では,体重の10%増加が中等度・重症OSAへの発症リスクを6倍増加させており,その発症は減量により抑制されていることが示されている.したがって,より若年から適正体重の維持に努めることが,OSAに関連した高血圧の発症抑制にもつながると考えられる.
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