循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)
【ダイジェスト版】
5 OSAに合併した高血圧の治療
(表29)
①非薬物療法
肥満OSA患者では,減量が最も有効である.また,アルコール摂取によりOSASは悪化することから,節酒も指導する.喫煙者には禁煙を指導する.
② 持続気道陽圧(CPAP)療法
中等度・重症OSA(AHI > 20)を合併する高血圧患者では,まず持続気道陽圧(CPAP)療法を行う(図9).CPAP療法により多くの患者で降圧効果が得られ,夜間の血圧サージは低下し,心血管予後も改善する.ただしCPAPの効果には個人差があり,より血圧レベルが高い高血圧,未治療高血圧,夜間高血圧 ,治療抵抗性高血圧などの特徴を有する高血圧例では,CPAPによる降圧効果が大きい.特に,夜間高血圧non-dipper・riser型ではCPAPにより睡眠中の血圧がより選択的に低下し,正常dipper型に回復すること場合が多い.さらに,BMI 高値で,より重症のOSA(AHI > 30)では,CPAPによる降圧程度が大きい.また,昼間の眠気の有無もCPAPの降圧効果に影響を与える.OSA患者ではCPAPによる日中血圧の降圧効果が乏しい場合もあり,CPAP治療の継続率も低い.CPAP治療により明確な降圧効果を期待するには,CPAPに対するコンプライアンスが良好で,一晩3時間以上使用し,AHI が50%以上減少する効果があり,さらに,より長期に使用することが重要である.
③ 降圧薬
AHI < 20の軽症~中等症OSA高血圧患者や,CPAP拒否ないしは自己中断した中等~重症OSA高血圧患者では,心血管リスクは残存する.このような患者はハイリスク高血圧患者と考え,より厳格な24時間にわたる降圧療法を行うことが望ましい(クラスⅡ a,エビデンスレベルC).目標降圧レベルにエビデンスはまだないが,胸部大動脈や心臓への無呼吸発作時の胸腔内陰圧負荷の増大(時に-80 mmHgに達することがある)を加味し,特に夜間血圧をその基準値である120/70 mmHg未満に抑制しておくことが重要である.
表29 OSA合併高血圧患者の治療
図9 睡眠時無呼吸症候群を伴う高血圧患者の治療方針
クラスⅠ
◦肥満患者に対する減量(エビデンスレベルA)
◦禁煙指導(エビデンスレベルB)
◦中等度・重症OSA(AHI>20)を合併する高血圧患者
に対する持続性陽圧呼吸(CPAP)(エビデンスレベルA)
クラスⅡa
◦AHI<20の軽症・中等症OSA高血圧患者に対する,
夜間血圧120/70 mmHg を目標とした厳格な降圧療法
(エビデンスレベルC)
◦CPAPを拒否ないしは自己中断した中等度・重症OSAS
高血圧患者に対する,夜間血圧120/70 mmHg を目標
とした厳格な降圧療法(エビデンスレベルC)
◦就寝前の飲酒の禁止(エビデンスレベルC)
クラスⅡb
なし
クラスⅢ
なし
継続不可能
高血圧
閉塞性睡眠時無呼吸症候群
Apnea hypopnea index
≧20 <20
CPAP
継続可能降圧薬投与
達成未達成減量・節酒・禁煙CPAP
継続可能降圧薬投与継続不可能