循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)
【ダイジェスト版】
クラスⅠ
◦すべての心不全に対する簡易モニターによる睡眠呼吸
障害のスクリーニング(エビデンスレベルC)
クラスⅡa
 なし
クラスⅡb
 なし
クラスⅢ
 なし
心不全症例
簡易計によるSDB スクリーニング
OSA 治療へ経過観察
AHI<15 AHI≧15
忍容性良好忍容性不良
CPAP 療法継続ASV またはbi-level
PAP タイトレーション
夜間酸素療法の
適応を満たす
夜間酸素療法
ACE 阻害薬/ アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬
β遮断薬
利尿薬
抗アルドステロン薬
心臓再同期療法
外科的治療 など
心不全治療の最適化
CSR-CSA が疑われる
PSG
OSA が疑われる
AHI<15 AHI≧15
忍容性良好忍容性不良
ASV,bi-level PAP 療法継続OSA 混在
AHI<15 AHI≧15
ありなし
CPAP タイトレーション
2 心不全
(図10,表30)
 心不全患者における睡眠呼吸障害の特徴は,閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)に加え,チェーン・ストークス呼吸を伴う中枢性睡眠時無呼吸(central sleep apnea with Cheyne-Stokes respiration:CSR-CSA)を高率に認めることである.

 OSAは,他の危険因子と独立して心不全の発症リスクを高めることが米国の大規模コホート研究で示されている.一方,CSR-CSAは心不全の結果とみなされている.いずれの睡眠時無呼吸も心不全に合併するとその予後を悪化させることが知られている.

 慢性心不全で通院中の患者や心不全で入院加療中の患者には,簡易モニターを用いて積極的にスクリーニングを行うことが推奨される(クラスⅠ,エビデンスレベルC).睡眠呼吸障害の疑いがあれば,終夜睡眠ポリグラフィー(polysomnography;PSG)検査を予定する.

 OSAの治療方針は,心不全の有無に関わらずほぼ確立されている.肥満患者には減量を指導し,飲酒や睡眠薬の制限などの一般療法を行い,上気道に解剖学的な異常がある場合には,耳鼻科や口腔外科に相談する.中等度以上のOSAを有する患者にはCPAP治療の適応と考える.我が国におけるCPAPの健康保険適用は,PSGではAHI20 以上,簡易診断装置ではAHI ≧ 40である.

 一方,CSR-CSAを合併する場合の治療にとしては薬物療法,CPAP,その他の陽圧療法などがあるが指針は確立されていない.冠血行再建術や弁膜症手術などの基礎心疾患に対する治療と心不全の薬物治療の最適化を基本とした上で,CSR-CSAへの直接的な介入を考慮する.
図10 心不全に合併する睡眠呼吸障害治療アルゴリズム
表30 心不全患者における睡眠呼吸障害のスクリーニング
注)陽圧治療や酸素療法ができない場合は薬物投与を考慮してもよい.
*CPAPの導入にあたっては保険適用を考慮
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