循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)
【ダイジェスト版】
3 不整脈
(表31)
通常の睡眠において,non-REM期に交感神経活動の低下や副交感神経活性の亢進による心拍数の低下,REM期には末梢交感神経・副交感神経活動の亢進による心拍変動がみられ,器質的心疾患を伴わなくても洞徐脈,洞停止やWenchebach型房室ブロックなどの徐脈性不整脈が認められる.SDBによる反復する無呼吸と呼吸再開,低酸素血症と覚醒反応は急激な自律神経緊張の変動を介して,伝導障害を悪化させ,重症徐脈性不整脈を引き起こす.また,SDBは心筋虚血や心筋リモデリングを促進し,不整脈発生の基質を形成する.中途覚醒,低酸素血症,アシドーシスによる交感神経活動の亢進や自律神経のゆらぎは頻脈性不整脈の素因となり,自動能の亢進や撃発活動を引き起こし,リエントリーの成立も促進する.さらに無呼吸に伴う胸腔内圧の陰圧化とtransmural pressureは,前負荷・後負荷を増大させ心筋の伸展を促進し,心筋の機械的伸展刺激に伴う電気的フィードバックを介した関与も考えられる.再分極相に与える影響も示されており,SDBは不整脈の発生においてその基質,誘因,修飾因子に影響し,不整脈発生に関与していると推測される.
表31 不整脈患者における睡眠呼吸障害スクリーニング
クラスⅠ
なし
クラスⅡa
◦夜間就寝中の不整脈に対する睡眠検査(エビデンスレ
ベルB)
クラスⅡb
なし
クラスⅢ
なし