循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)
【ダイジェスト版】
1 徐脈性不整脈
(表32)
SDBの約5 ~ 10%に夜間の洞徐脈,洞停止,房室ブロックなどの徐脈性不整脈がみられる.徐脈は無呼吸開始から始まり,低酸素血症とともに増悪するが,覚醒反応と呼吸再開時の肺伸展受容器刺激により呼吸再開後一過性頻脈となる.しかし,その後再び副交感神経の影響が強くなるために,頻脈が持続することはない.このようにSDB患者では,睡眠中に無呼吸周期と連動した特徴的な周期的心拍変動がみられ,SDBの診断にも有用とされている.
徐脈性不整脈の合併はSDBの重症度と相関するとされており,特に低酸素血症の関与が指摘されているが,夜間就寝中の徐脈には,SDBとは独立したREM期における自律神経活動の影響も考えられている(REM sleeprelated brady-arrhythmia syndrome).
SDBによる夜間就寝中の無症候性徐脈は機能的徐脈であり,SDB治療により80~ 90%の症例で改善,消失する.そのため,徐脈の原因として睡眠呼吸障害の関与が疑われる場合には,SDB治療を第一選択とするべきであり(クラスⅠ,エビデンスレベルB),無症候性徐脈へのペースメーカ植え込みは行うべきではない.夜間就寝中に徐脈を呈する症例に対しては潜在する睡眠呼吸障害について留意し,スクリーニングを行う必要がある.しかし,CPAP無効例や認容性やコンプライアンスが得られない場合には,個々の症例においてペースメーカ植え込みを考慮すべきである.
表32 睡眠呼吸障害に伴う夜間無症候性徐脈に対する治療
クラスⅠ
◦CPAP療法(エビデンスレベルB)
クラスⅡa
なし
クラスⅡb
◦CPAP療法に忍容性がない場合のぺースメーカ植え込
み
クラスⅢ
なし