循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)
【ダイジェスト版】
2 OSASを合併した脳卒中患者の治療
(表35)
脳卒中発症の急性期から,睡眠呼吸障害と脳卒中には悪循環が成立している可能性がある.脳卒中患者では,急性期より睡眠呼吸障害を検出・治療することにより,この悪循環を断ち切り,脳虚血の進展を抑制できる可能性がある.さらに,慢性期の脳卒中の二次予防においても,睡眠呼吸障害とそれに関連したリスク因子の管理は,心血管リスクの減少と生命予後の改善において重要である.
OSAを合併した脳卒中では,通常の脳卒中治療と心血管リスク管理に加えて,CPAP療法を行うことを原則とする(クラスⅠ a,エビデンスレベルB).しかし,OSAと脳卒中患者の治患者療には,CPAP治療や血圧管理に対するネガティブ要因も多く,脳卒中リハビリテーションにも時間を要する.CPAP治療が行えない脳卒中患者では,極めて心血管リスクが高いことを念頭に,より徹底した心血管リスク因子の統合的管理を必要とする(クラスⅡa,エビデンスレベルC).
これまで脳卒中患者において,CPAP療法が心血管予後や生命予後を改善することを明確に示した研究は,いずれも観察研究である.すなわち,CPAP療法に忍容性があり,長期にわたり継続できたコンプライアンス良好な睡眠呼吸障害患者においてのみ,予後の改善がみられている.一方,脳卒中急性期患者を対象に,CPAP療法の有用性を通常治療と比較した無作為比較試験においては,CPAP群において継続率が低く,明確な予後改善効果がみられていない.脳卒中治療におけるCPAP療法の問題点は,忍容性が低いことにある.脳卒中患者のCPAP療法のコンプライアンス不良の規定因子は,認知機能低下やせん妄,身体機能低下,さらに失語などが報告されている.
表35 OSAを合併した脳卒中患者の治療・管理
クラスⅠ
◦脳卒中二次予防を目的としたCPAP療法(エビデンス
レベルB)
クラスⅡa
◦CPAP治療が行えない脳卒中患者における,より徹底
した心血管リスク因子の統合的管理(エビデンスレベ
ルC)