循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)
【ダイジェスト版】
3 心血管リスク因子の徹底管理
OSAを合併した脳卒中患者では,心血管ハイリスク群と考え,CPAP治療のコンプライアンスいかんにかかわらず,徹底した心血管リスク因子の統合的治療管理を行う.
① 血圧管理
脳卒中二次予防においても,血圧管理が重要である.日本高血圧学会・高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)が推奨する脳卒中患者の血圧管理レベルは,診察室血圧で140/90 mmHg未満である.しかし,脳卒中二次予防に対する降圧治療の効果を検討したPROGRESS試験では130/80 mmHg未満で,より有効な脳卒中予後の改善がみられていることから,内頸動脈や脳主幹動脈に狭窄・閉塞病変があるアテローム血栓性脳梗塞などを除いて,脳出血やラクナ梗塞では,140/90 mmHg未満よりもさらに低レベルの厳格な降圧が望ましい.使用する降圧薬は,アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬などレニン・アンジオテンシン抑制薬,カルシウム拮抗薬,利尿薬を組み合わせる.
さらに,OSAを合併した脳卒中患者の特徴として,治療抵抗性高血圧が多く,特に夜間高血圧が見過ごされていることがある.OSAならびに脳卒中自体により,夜間優位の中枢性交感神経の亢進が生じ,non-dipper・riser型夜間高血圧を生じることが多い.さらに,脳卒中患者では身体機能が低下し,昼間の血圧上昇が減少しており,診察室血圧や家庭血圧が正常でも,夜間血圧が高値である仮面夜間高血圧を見過ごされることがある.仮面高血圧のリスクは持続性高血圧と同程度に高い.したがって,OSAを合併した脳卒中患者では,ハイルスク高血圧患者と同様に,ABPMによる夜間血圧の評価と,夜間血圧120/70 mmHg未満へのコントロールを含めた24時間血圧管理が望ましい.
② その他のリスク管理
さらに,脳卒中患者では脂質異常症に対するスタチン療法,糖代謝異常に対するチアゾリジン系薬剤などによる糖代謝改善を行い,虚血性脳卒中では抗血小板療法を加える.さらに,心房細動の合併例では抗凝固療法を加え,徹底した統合的心血管リスク管理を行う.OSAを合併した脳卒中患者では,これらの治療管理をより徹底させ,さらに血圧変動性が大きいことを考慮して,抗血小板・抗凝固療法は十分な24時間血圧管理下に行うことが推奨される.