循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)
【ダイジェスト版】
2 生活習慣の是正と運動(節酒,睡眠剤の中止など)
(表14)
肥満以外で気道閉塞を生じる要因となるのが,性別,喫煙,睡眠剤の使用,加齢である.男性は女性に比して上気道周囲に脂肪沈着を来たしやすいため,OSAを来たしやすい.そのため,男性には肥満に対する指導がより重要である.
アルコールは上気道の拡張筋の緊張を弛緩させ,上気道抵抗を増幅させる.したがって,OSA加療目的には就寝前の飲酒は禁止する
(クラスⅡaエビデンスレベルC).
喫煙は気道系に炎症をもたらして上気道の閉塞を誘発する.喫煙者は非喫煙者に比して有意にOSAが多く,禁煙により若干改善する.したがって,OSAが存在する場合には,より強い禁煙指導が必要である(クラスⅠ,エビデンスレベルB).
睡眠導入剤は,中枢および末梢化学受容体に対しては感受性を低下させ,夜間の過剰換気を抑制する方向に作用する.一方,骨格筋のトーヌスに対しては,上気道の拡張筋を弛緩させて上気道に閉塞を来たしやすくする.OSAの場合には,化学受容体よりも気道閉塞への影響が強く出るため,睡眠時無呼吸を増悪させる方向に作用するので注意を要する.
OSA患者にとって,最も重要な生活習慣への介入ポイントは前項の肥満の改善であるが,それを達成するためには食事療法と並んで運動療法が重要である.軽く息が切れるレベルの30~ 60分間の有酸素運動を週4 ~ 7回行うのが望ましい.また,体型に関係なく運動習慣とSASの頻度は関係あるとされ,運動は肥満改善とは異なる機序で睡眠時呼吸異常を改善させる可能性も考えられる.
表14 生活習慣の是正
クラスⅠ
◦禁煙指導(エビデンスレベルB)
クラスⅡa
◦就寝前の飲酒の禁止(エビデンスレベルC)
クラスⅡb
なし
クラスⅢ
なし