循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)
【ダイジェスト版】
2 デバイス,外科治療
(表21)
CSAを伴う心不全患者を治療するにあたり,CSAに対する直接的な介入に先立ち,心不全に対する最適な治療を行うべきである.心機能や血行動態の改善に伴ってCSAの減少を認めることが多いためである.心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy:CRT) は,右室と左室を同時にペーシングすることにより左室の非同期性収縮を是正し,それにより効果的に心機能を改善させる方法である.運動耐容能やQOLの改善のほか,CARE-HF試験によってCRTの生命予後改善効果が証明され,心不全に対する非薬物療法としてその有用性は確立されつつある.我が国の現在のCRTの適応基準は,薬物治療によってもNYHAクラスⅢまたはⅣから改善しない左室駆出率35%以下の重症心不全で,QRS幅130msec以上の心室内伝導障害を有する患者となっている.慢性心不全患者にみられるCSAがCRTによって減少することが報告されているが,現状ではCSAの改善のみを目的としたCRTの導入は容認できない.
CRT以外の非薬物治療によるCSAの変化を観察した報告が散見される.虚血性心筋症患者へのカテーテル治療後や僧帽弁閉鎖不全症患者への僧帽弁形成術後,急性の代償不全に陥った終末期の重症心不全患者に対する左心補助人工心臓(left ventricular assist device:LVAS)の植え込み後や心臓移植後にCSAが抑制~消失することが報告されているが,これらも心不全自体の改善の結果であると考えられる.
表21 デバイス治療・手術療法
クラスⅠ
◦CRT の適応基準を満たした,CSAを合併する慢性心不
全患者へのCRT(エビデンスレベルC)
◦基礎心疾患に対する手術適応があるCSA合併患者への
心臓外科手術(エビデンスレベルC)
クラスⅡa
なし
クラスⅡb
なし
クラスⅢ
◦CRTの適応基準を満たさない患者に対するCSAの減少
のみを目的に行うCRT(エビデンスレベルC)
◦CSAの減少のみを目的に行う心臓外科手術(エビデン
スレベルC)