循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)
【ダイジェスト版】
5 持続気道陽圧(CPAP)療法
(表23)
 CSR-CSAは心不全の二次的病態で,その重症度(AHI)が肺毛細血管楔入圧と関連することが報告されている.一方,左室充満圧が高い不全心に対するCPAPの覚醒時の急性効果として,胸腔内圧上昇に伴う静脈還流量低下による前負荷低減および壁内外圧差低下に伴う相対的左室後負荷低減,1 回拍出量の増加が報告されており,CSR-CSAに対するCPAPの作用機序の1 つとして,血行動態の改善が関与していると考えられる.

 CSR-CSAに対するCPAP療法の予後への効果を検討したCANPAP研究(計258例,平均観察期間2年)では,control群と比較してCPAP療法群において,左室駆出率の有意な改善および血漿ノルアドレナリン濃度の有意な低下を認めたが,transplant free survivalの改善効果は証明されなかった.そのPost Hoc解析で,CPAP療法によりAHI < 15にCSR-CSAが抑制できれば,transplant free survivalを改善させる可能性が報告された.

 これらの結果より,CPAP療法は“non-responder”に行うべきでなく,acute CPAP titrationを行い,“non-responder”でないことを確認するべきである.右心不全を伴い前負荷依存性となっている例や十分に左室充満圧が低い例では,CPAPの急性効果として血行動態が悪化する可能性もあり,必ず覚醒時CPAP 中に血圧や脈拍などの評価を行い,血行動態に悪影響がないことを確認する必要がある.さらにAHI ≧15のCSR-CSAが残存する場合やCPAP療法に対する忍容性が不十分な場合では,速やかにその他の陽圧療法などへの変更を行うべきである.
表23 心不全合併CSR-CSAに対するCPAP療法
注)AHI は,PSGによって評価する.
クラスⅠ
 なし
クラスⅡa
◦AHI≧15で,CPAP療法によりAHI<15に改善し,か
つCPAP療法に対する忍容性が十分な場合(エビデン
スレベルB)
クラスⅡb
 なし
クラスⅢ
◦AHI≧15でCPAP療法により有意な改善がみられない
場合(エビデンスレベルB)
◦AHI≧15で,CPAP療法に対する忍容性が不十分な場
合(エビデンスレベルC)
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