循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)
【ダイジェスト版】
1 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の疫学
OSAに関しては欧米,オーストラリア,アジアなどでいくつかのpopulationベースのcohort studyが行われており,その高い有病率が報告されている.平均すると5 人に1人はAHI ≧ 5であり,15人に1人はAHI ≧ 15,つまり循環器疾患の発症リスクの高まる中等~重症のOSAに罹患していると考えられている.我が国では大規模な疫学研究はなく,正確なOSA有病率は明らかではないが,一般住民910名を対象とした疫学調査においてAHI ≧ 10のOSASは男性3.3%,女性0.5%(全体で1.7%)との報告があり,患者数は約200万人と推定されている.しかし問題は診断率であり,治療の対象となるOSAの85%以上が未診断といわれている.
OSAは低酸素血症や交感神経活性の亢進などを介して二次的に種々の病態を惹起する.特に循環器疾患との関連は強く,合併頻度が高いだけでなくOSAにより循環器疾患の病態が修飾される.米国のSleep Heart HealthStudy(SHHS)によれば,AHI ≧ 11のSDBがある群での主な循環器疾患発症のオッズ比は,心不全2.38,脳卒中1.58,冠動脈疾患1.27であった.
OSAは予後にも影響を及ぼし,中等症~重症のOSA患者の死亡率は対照群に比較して有意に高い.